大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ネ)351号 判決

≪証拠≫によれば、協栄プロモーションは、昭和五四年一月五日三菱電機株式会社及び株式会社博報堂との間において、契約料一三〇〇万円で具志堅の三菱電機テレビ広告宣伝の出演契約を結び、その契約料の払込を受けて、具志堅に対し、同年五月八日「三菱電機CM出演」の費目の下に一五〇万円を、同月二八日「CM出演料」の費目の下に五〇〇万円を出金処理したこと、ところが、控訴人は、昭和五五年度の右契約に先立って株式会社博報堂の担当者に対し鈴木企画なる企業と契約するようにと指示したため、株式会社博報堂は、鈴木企画こと鈴木盈との間で契約料一五〇〇万円で前年度同様の契約を結び、鈴木に対してその契約料から源泉徴収にかかる税金分を除いた一三五〇万円を払い込んだこと、鈴木はそのうち五五〇万円を取得したうえ八〇〇万円を協栄プロモーションに送金し、さらに協栄プロモーションはそのうち五〇〇万円を具志堅に支払ったが、鈴木は右の五五〇万円の収入を税務申告しなかったこと、鈴木はボクシングジム経営者で、控訴人が全日本ボクシング協会の会長に就任するとともにその事務局次長となり、控訴人から控訴人の経費負担の下で全日本ボクシング協会の広報誌を作るように指示されており、他方で税対策上株式会社鈴木企画を設立することを企図していたものの、結局設立しないままに終わったが、株式会社博報堂から取得した五五〇万円を右広報誌の発行費用として使用したことが認められる。ところで、当審における控訴人本人尋問の結果中には、昭和五四年の広告宣伝の出演料一三〇〇万円中の半分六五〇万円を具志堅が取得したことに触れて、具志堅もその取扱いを納得していたとする部分があり、また当審証人鈴木盈の証言中には、協栄プロモーションと鈴木との間で契約料を八〇〇万円とする契約ができていたことについては具志堅もそれを知っていたはずだとする部分があるが、前掲乙第五号証、第一四号証の記載と対比していずれも措信できず、他に右各供述にかかる事実を認めるべき証拠はない。

以上によれば、本件において証拠にあらわれた限りにおいては、控訴人が何らかの形で関与した三菱電機の具志堅にかかる広告宣伝出演契約は、二年度にわたり二回であって、その契約料はそれぞれ一三〇〇万円、一五〇〇万円であり、合計しても三〇〇〇万円には足らず、具志堅が取得した金額はそれぞれ六五〇万円、五〇〇万円であるから、番号五の記事に摘示された事実には客観的事実と相違する部分が一部にあるとするのほかはない。しかし、前記1の(九)の認定事実をもあわせて考えると、他方で、具志堅は十分な説明を受けることもないままこのような少額の手取りに甘んじることを余儀なくされていたこと、また、控訴人は、自分が経費負担をすべきであった前記広報誌の発行に要する資金を捻出するため、昭和五五年度分の前記出演契約について、自分の指揮下にある人物を介在させて契約額の一部をカットしたもので、この経過を評していわゆる裏金作りをしたものと称されても怪しむに足りない事情のあることも看取され、番号五の記事は右の一部の金額関係の部分を除けば客観的事実に合致しているということができる。さらに、この点に、控訴人は具志堅の三菱電機の広告宣伝料が三〇〇〇万円であることを自ら吹聴していたこと(この事実は、原審証人石山伊佐夫の証言によって認定することができる)、前記認定の1の(四)、(八)及び(九)の各事実を総合すると、石山記者らが番号五の記事中前記客観的事実と相違する部分を真実と信じたことも無理からぬものがあるというべきであって、相当の理由があったと判断せざるを得ない。

(高野 野田 成田)

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